「!今日うちに泊っていくといいネ!」 「おー、そうだな。せっかくだし。晩御飯も作ってもらえると嬉しいなぁとか銀さんは思うけど」 「アハハ、それじゃぁぜひ!………あっ!」 「さんどうかしました?」 窓の外に目をやると、藍色と橙色のコントラスト。 確か今日は屯所を出る前に近藤さんに「なるべく早く帰ってきて」と言われていた。それはあたしの歓迎会を開いてくれるから、で。 や、やばい!早く帰らなくちゃ! 手元の時計を確認すると、長針は12を、短針は6を指している。 「え、えっと、ごめんなさい!今日早く帰ってこいって言われてたんです…!」 「えー!帰るアルか?!もっと一緒にいたいネ!」 「今日も新八の作るご飯かと思うと嫌んなるぜ…」 「そんなこと言うなら銀さんの分作りませんから!」 「ごめんなさい、えっと、また遊びにくるからね、神楽ちゃん!あとケーキも作ってくるんで!」 「おー!楽しみにしてる!いつでも遊びにこいよな、!」 「あんた態度変わりすぎ!逆に清々しいよそれ!」 わいわい騒ぎながら玄関までお見送りしてくれる万事屋の三人。そんな三人を見ながらあたしは近いうちにまた遊びにこようと心に決めた。ケーキを手土産に、そして今度は晩御飯も作って、近藤さんが許してくれるならお泊まりもしちゃおう、なんて、考えながら。 「今日は楽しかったです、ありがとうございました」 「また遊びにくるアルよ!絶対ヨ!」 「うん、また近いうちにおじゃまするね」 「なら大歓迎だからな、遠慮なんかすんじゃねェぞ」 「ありがとうございます、銀時さん」 「ケーキまで持ってきてくれたのに、ちゃんとしたもの出せなくてすみませんでした、ほんと。今度くるときにはなんか用意しておくんで!」 「大丈夫、気にしないでね新八くん。すごく楽しかったから!それじゃ、おじゃましました!」 「またネ!!」 笑顔で見送ってくれる三人に手を振って、あたしは戸に手をかけた。 今日は本当に楽しかった。万事屋の三人という素敵なお友達もできた、これからちゃんとこの世界でも生きていけそうだ。というか、あたしは元々この世界の人ではない、のだ。うっかりそれを忘れてしまう、最初からこの世界で生きてきた感覚になってしまう、それほど毎日を楽しんでいる自分がいる。 そんな自分にちょっと笑える。そして自分の順応性に少し感謝した。 屯所に帰ったら、まずは遅くなったことを謝ろう。そして、昨日沖田さんと作ったケーキの余りを冷蔵庫へ入れてきたままだからそれを皆さんにあげよう。あ、もしかしたらケーキがあることに気付いてもう食べてるかもなぁ。土方さんはやっぱりケーキにもマヨネーズをかけるのかな、…かけるんだろうな。 「……あ、れ………?」 万事屋の戸を開けて一歩踏み出した先、見えたのは懐かしいリビングと金魚鉢の置かれた出窓に脱ぎっ放しにされたパジャマ。ぐるりと周りを見渡したけれど、もうそこにはさっきまでの風景なんてこれっぽっちも残っていなかった。 見えるのは、懐かしく感じるあたしのいた世界、だ。 いったいどうなってんの、これ…! ** な、ながい…! 20070512 |