「なぁー、沖田くーん」 「…なんですかィ」 「進路希望調査、早く提出してほしいんだけど」 「あー、あれァ、紙飛行機にして飛ばしやした」 「な?!ったく…なにしてくれちゃってんですかコノヤロー。別に俺ァ、沖田くんがどんな進路選ぼうとも構わねぇけど一応俺も教師だから。面談とかそういうのあるじゃねぇか。一応決めといてくんなきゃ困るんだよ」 「プリントくだせぇ。今すぐ書きまさァ」 「え?すぐ書けんの?進路決まってんの?」 放課後の誰もいなくなった教室で、俺は抹茶オ・レを片手にジャンプを読み耽っていた(銀八が買ってきていた今週号)。あー、とっとと家に帰るんだった。まーた進路の話かよ、その話には飽き飽きでさァ。銀八だけじゃねぇ、近藤さんや土方さん、更には山崎まで何かと俺に進路の話を振ってくる。なんだってんだ。俺の心配なんかしてねぇで、自分のことやってろってんでィ。 銀八から受け取ったプリントの第一希望から第三希望の欄にかけて、大きく書いたのは、未定の二文字。それを銀八へポイッと手渡す。 「ほいっ、書けましたっと」 「おいおいちょっと沖田くん、これじゃぁ意味ないんですけど」 「未定なもんは未定なんでさァ。仕方ないだろィ」 「…仕方ない、か」 銀八は小さな声で俺の言葉を繰り返すと、渡したプリントをクシャクシャっと白衣のポケットにしまって教卓に座った。足を組んで煙草を吸い始める奴を一視してから、俺は漫画の続きを眼で追う。俺もネウロの様なパートナーを見つけて弥子ちゃんの様な探偵になりやしょうかー…なーんて。 「なぁ、最近ピリピリしてんのも仕方ないから?」 「は?…なんの話ですかィ」 「いやぁ〜、自覚ないのも困りものだねぇ。最近の沖田くん、異様なほど殺気立ってるよ?殺気っつーか、イライラしてるっつーか、なんだ、」 「言いたいことあるならハッキリ言ってくだせェ」 「そういうイライラって、周りに迷惑」 「っ…銀八には関係ない」 煩い煩い煩い。どうして銀八にそんなこと言われなきゃなんねぇんですかィ。俺だって分かってまさァ。土方も山崎も、チャイナや志村の姉が遠まわしに俺に気を遣ってきてること。 どうしてこうも核心をついてくるんだ、あの似非教師は。イライラ増幅、本当にどうしようもない。イライラしている自分にほとほと呆れる。 煙草の匂いを纏わりつかせた銀八の横をザッと通り抜け、力任せにドアを開けた。 歯 車 は い つ 狂 っ た か 全ては自分が撒いた種。 ( だけど、こんなはずじゃなかった。 )
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